東京商工リサーチは2023年12月31日、「倒産増加率」についてのまとめを公表した。これによれば、コロナ支援の反動や物価高、人手不足などで倒産が急増。30年ぶりの高水準だったという。
倒産が増える業種、2024年問題を控える「道路貨物運送業」で85.5%
2023年5月に新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行を受けて、景況の回復が期待された。
しかし東京商工リサーチによれば、コロナ支援の反動や物価高、人手不足などで倒産(企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態)が急増。増加率(2022年比)は、リーマン・ショック(2008年)やITバブル(1999年から2000年)を大幅に上回り、バブル崩壊後の1993年以降では最大となったという。
数字で見ると、2023年1月~11月までの負債1000万円以上の倒産は7880件に達し、コロナ禍の2020年(7773件)、2021年(6030件)、2022年(6428件)それぞれの年間件数を超えたことが分かっている。集計中の12月を含めると、2023年は8000件台半ばを超える勢いで、前年比では30%増の可能性もある。
2008年のリーマン・ショックは前年比11.0%増、2000年のITバブル崩壊は前年比22.2%増だったことを考えると、相当深刻な倒産件数であることが分かる。
また東京商工リサーチが12月に実施したアンケートによると、2024年は自社業界の倒産が「増える」と回答した企業が約6割(56.7%)。「減る」はわずか3.7%。倒産が「増える」と回答した業種上位は、2024年問題を控える「道路貨物運送業」で85.5%、出版や広告制作など「映像・音声・文字情報制作業」、コスト増が続く「農業」がそれぞれ83.3%と続いたという。
取引先の急な倒産への備えも必要
東京商工リサーチによれば、倒産は2001年の1万9146件と比較するとまだ半数だ。しかし倒産にカウントされない廃業(経営者が自主的に経営をやめること、消滅させる)も高水準で、私的整理(破産法・民事再生法・会社更生法などの法的手続きによらず、裁判所を介在せずに債権者と債務者の合意によって債権債務を処理する手続き)の枠組みが整いつつある。自社(自分)とかかわりのある企業が事業を辞めたり、債務整理に着手する可能性が高まっているという。
なお、今後は取引先の急な倒産への備えも必要となる。中小企業(事業者)においては、慌てないよう、事前に情報を得ておくことも大切だ。
▼出典元:東京商工リサーチ「倒産増加率が30年ぶりの高水準 ~ 企業、個人とも「自己防衛」の時代に ~